03 事業概要
銘柄:郵船(9101) 更新日:2026年5月16日
事業概要(3行サマリー)
日本郵船(NYK Line)は国内最大・世界有数の総合海運会社で、定期船・ドライバルク・エネルギー・自動車・航空・物流の6事業にわたるグローバル展開を行う。コンテナ定期船事業においては日本国内3社(郵船・商船三井・川崎汽船)が設立したOcean Network Express(ONE)に持分20%を保有し、2025年3月期に当事業セグメントから経常利益2,744億円(セグメント中最大)を獲得した。中期経営計画"Sail Green, Drive Transformations 2026"において4年間で1.2兆円の事業投資を計画し、脱炭素・デジタル化・非海運事業拡大で市況依存型から安定収益型への構造転換を目指す。
セグメント別収益構成(直近決算期:2025年3月期)
セグメント利益はirbank取得の経常利益ベース。連結営業利益(2,108億円)との乖離が大きい(セグメント合計約5,015億円)のは、ONE等の持分法損益・本社費用・消去が連結調整段階で処理されるためであり、定義が異なる点に注意。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 経常利益※ | 利益構成比 | 利益率 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 物流事業 | 8,090億円 | 31.3% | 213億円 | 4.3% | 2.6% | D2 |
| 自動車事業 | 5,319億円 | 20.6% | 1,134億円 | 22.6% | 21.3% | D2 |
| ドライバルク事業 | 6,013億円 | 23.3% | 181億円 | 3.6% | 3.0% | D2 |
| エネルギー事業 | 1,782億円 | 6.9% | 462億円 | 9.2% | 25.9% | D2 |
| 定期船事業 | 1,744億円 | 6.7% | 2,744億円 | 54.7% | 157.3%▲ | D2 |
| 航空運送事業 | 1,792億円 | 6.9% | 211億円 | 4.2% | 11.8% | D2 |
| その他 | 1,147億円 | 4.4% | 69.5億円 | 1.4% | 6.1% | D2 |
| 合計(連結) | 25,887億円 | 100% | (連結営業利益 2,108億円) | 8.1% | D4 |
※経常利益ベース(irbank取得)。定期船事業の利益率が100%超なのは、ONEへの持分法適用益がセグメント売上(内部管理上の計上額)を大きく超えるためであり、セグメント売上高の定義が他セグメントと異なる。連結営業利益はD4ベース(2,108億円)を参照のこと。
利益率格差のメカニズム: 定期船事業はONEへの持分20%の受取配当・持分損益が中心で売上計上は限定的。エネルギー事業(LNGタンカー等)は長期契約ベースの安定高収益。自動車事業は専用船運賃上昇と稼働増で高収益化。物流事業・ドライバルク事業は市況感応度が高くマージンは低め。
強み・弱み
強み:
- 多角的事業ポートフォリオ: コンテナ(ONE持分)・エネルギー(LNG長期契約)・自動車専用船・ドライバルク・航空・物流の6軸で、単一市況の下落リスクを分散できる構造(D4: FY2022〜FY2025で一定の利益水準を維持)
- ONE持分(定期船)の収益力: ONEはグローバルコンテナ市場のTOP8、日本3社の統合会社として規模の経済を実現。コンテナ運賃高騰期には持分損益が連結利益の過半を占める(FY2023・FY2022に純利1兆円規模を実現)
- エネルギー事業の安定性: LNG・タンカーは10〜20年の長期契約が主体で市況変動の影響を受けにくく、脱炭素需要増で中長期需給は引き締まり方向
弱み:
- 海運市況への高感応度: コンテナ運賃・ドライバルク市況が下落すると連結利益が急減(FY2026実績は純利2,117億と前年比55.7%減)
- 自動車事業のコスト圧力: 代替ルート選択による輸送日数増・燃料費増でコスト上昇リスク(D3: 2026-05-12ニュース影響)。EVシフトによる自動車生産台数変動も影響
- ONE依存リスク: 持分20%の関連会社損益が連結業績を左右するが、意思決定は独立会社(3社合議)に委ねており単独コントロール不可
競争優位の耐久性評価
- 持続可能性: 過去5期の営業利益率は2.1%〜11.3%と変動幅が大きく、コンテナ市況サイクルに強く依存する。LNG・自動車専用船など長期契約ベースの事業が安定収益の底を支えており、中計投資(1.2兆円)による非市況事業拡大が実現すれば利益率の安定性が改善する方向。
- 競争優位の方向性: 国内競合(商船三井・川崎汽船)と並ぶONE共同運営により定期船は事実上協調体制。自動車専用船は世界的需要増で稼働率高位。ただし脱炭素対応(アンモニア・水素燃料船)への投資競争が激化しており、大手欧州海運(Maersk・MSC)との技術差は縮小方向。
- 株価との関係: 現PBR0.77倍・PER10.7倍(D4)は、過去の超収益期(FY2022〜2023)を正常化した実力値に対して概ね適正〜やや割安水準(※AI推定)。コンテナ市況の回復・ONE増配があれば上方修正余地がある一方、ガイダンス(FY2027純利1,950億)は市場コンセンサスを下回る方向。
▼ セグメント内訳・地域別・中計(詳細)
セグメント別主要製品・サービス
- 定期船事業(ONE持分20%): グローバルコンテナ定期航路。ONEはアジア・欧米・中南米等の主要航路でシェア約7%。日本郵船はONEへの持分利益を計上
- ドライバルク事業: 鉄鉱石・石炭・穀物等の乾貨物輸送。スポット・長期契約ミックス
- エネルギー事業: LNGタンカー・原油タンカー・石油製品タンカー。LNGは長期契約(10〜20年)中心
- 自動車事業: 自動車専用船(PCTC)運航。世界最大級の自動車専用船隊を保有
- 物流事業: Yusen Logisticsを中心とした3PL・航空フォワーディング・港湾ターミナル
- 航空運送事業: 郵船航空サービスによる航空貨物代理店・フォワーディング
中期経営計画("Sail Green, Drive Transformations 2026")
- 計画期間: 2023〜2026年度(4年間)
- 事業投資額: 約1.2兆円(脱炭素・デジタル・新規事業が柱)
- 目標: 2026年度 経常利益2,700億円(※当初目標。足元の市況を踏まえ下方修正の可能性)
- 主要施策: ゼロエミッション船開発・自動車専用船追加発注・物流DX・洋上風力サポート事業参入
出所:irbank セグメントデータ(D2)、prices.db fundamentals(D4)、WebSearch(F1〜F3)。2026年5月16日現在。